育てよう
先日、矢部地区で長年「つばさ保育園」を運営されている川合さん夫妻にインタビューしてきました。
ここに保育園を作った経緯を教えてください。
自分たちの子どものことで保育園を探していて、新聞で「幸田町に『さくらさくらんぼ』で保育をする保育園ができる」というのを知り出かけていきました。見学して、結局住むことになって(笑)、子ども二人を預けてその保育園で10年働きました。そして新城に帰ってきて、30年前、自分とこの農業倉庫を改良して保育所を始めたのがスタートです。
どんなことを大切にしていますか?
「能力」よりもまずは「人格形成」を大切にしています。リズム体操や遊びで体をつくると自信になります。手助けしてあげられる子に育ちます。弱い者をかばったり差別をしない、という人格が育っていくように思っています。
そのためには、やはり「ほんもの」に多く接してもらいたいと思っています。保育園の床はヒノキなのね。とても温かみがあって柔らかい。リズム体操をするにも振動が体に優しく伝わるようになります。食べるものもそうだし、体に触れるもの、遊びも、子どもたちになるべく多く「ほんもの」を味わってもらいたい、味わわせてあげたいと思っています。
子どもと関わっていて感じることにはどんなことがありますか?
子どもたちに「絵」を書かせるのですが、日々の生活や親子関係、家族が絵に出てきて面白い。お母さんが口やかましいと口に「ペケ」してあったりね(笑)。体がきて保育が充実してくると、絵がいきいきしてくる。豊かな絵になってくる。親子関係や家族が素直に出る。それは本当に面白いね~。
その絵を見て保育に反映させたり、リズム体操につなげていったりします。「リズム体操」は斉藤公子さんが考案したもので、人間の生物としての進化を踏まえた体操になっています。手と足を使って運動器官、感覚を養います。それが脳によい刺激を与え、自分の力で物事を乗り越える力が身についていくのです。
川合さんにとっての原動力は何ですか?
やはり自分の子どもが「弱さ」をもって生まれてきたことかな。そのことで幸田の保育園で学んで、「しまった!」って思ったのね。もっと早くに気付いていれば、もっと小さい頃から刺激を与えられていたら…と思ってね。0歳児の可塑性というものはすごいものがあって、自然の中で遊ばせて脳に刺激を与えてあげることがすごくいい方向に作用することを学びました。それをこの保育園で実践していきたいと思っています。
これからやってみたいこと、将来の夢はありますか?
いまだに「理想の保育」を目指して実践中です(笑)。当初、想いは強かったのだけど環境が整ってなくていろいろ無理をかけていたのね。働く人もしっかり雇えなくていろんな方にボランティアで動いてもらっていた部分もあった。クラス分けもちゃんとできていなかった。ほんといろんな人に助けてもらったわね。子どもが集まらなかったり、運営面で大変な時期が長く続きました。
でも6年くらい前に声をかけてもらって、「0・1・2歳」のクラスは認可保育園になりました。その時に「つばさは歴史があるから」と言ってもらえてすごく嬉しかった。そのことが転機になってだいぶ環境が整ってきました。
これからも保育士とともに勉強です。保育の質が高まっていって、人としての「核」をつくることができるように努力していきたいと思っています。まだ道半ばです(笑)。
あとがき
30年という年月、いろんなご苦労がありながらご夫婦で歩んでこられた歴史や、保育への飽くなき情熱を感じました。子どもたちは裸足で園庭を走り回り、のびのびと遊んでいます。手作りのプールや裏山があり、ヤギや鶏などがいて、いろんな遊びが生まれてきそうな場所だな、と感じました。
今回、つばさ保育園のほんの一部分をご紹介しました。また機会があれば「リズム体操」のことをもっと知りたいし、子どもたちの一日の過ごし方などを取材したいと思いました。忙しい中ありがとうございました。
R.3.8.11 インタビュー 星洋輔