戸田会長に聞く2 古民家ってすごい

古民家について聞きたいです!

佐々木 ありがとうございます。もうちょっと聞きたいんですけども、地域協議会に参加されて,戸田さんが力を入れたいと考えているそういう活動があると思うんですけど、一つちょっとまず聞きたいのが,ちょっと東郷地域と離れちゃう部分があるかもしれません。空き家に関して、いろいろ東郷地域にも空き家はいろいろあると思うんですけども。そこのところで、今、まさにこの家(戸田工務店事務所)もそうなんですけど、民家再生とか、そのあたりのとこと、どのように力を入れていますか。

戸田さん これも新潟の空き家なんですね,下の部分。上が奥三河の空き家なんです。

佐々木 2軒が一つになったんですか。

戸田さん そう。越後と三河が合体した家なんです。

佐々木 へえ(驚)。

戸田さん 新潟はなんかもうすごく激しい過疎化で、(空き家も多く)こういう立派な材木も、全部ごみとして扱われるんです。三河も一緒ですよね。古民家があるというのが、どこにもあるわけじゃないんです。やはり、これ大きな理由は第二次世界大戦なんですね。名古屋とか、豊橋あたりは戦災で焼けているんです。空襲なんかでね。それ以外の、俗にいう立派な古民家があった名古屋の栄だとか、名古屋とか神戸とかみんな焼けちゃったんですよ。三河のここは戦災がないんです。そこで、どこにもあるんじゃないですこの古民家は。皆さん見慣れているからここにあるからそこら中にあると思ったら、大間違いなんですよ。日本全国ね、新潟なんかもそうですね、戦災に遭っていない。主要の町はみんな焼けちゃっているから。要するに古民家の空き家の多いのは、過疎地ですね、三河が多い。町にはないんですよ。

関原 そういう理由で・・・。

戸田さん 特に奥三河には多い。

関原 豊川にもないですか?

戸田さん 少ないですよね。まあ千両とかはありますよ。山手の方は。

佐々木 それで三河は多いということがわかったんですけど、その古民家再生とか、そのような活動でしようと思ったきっかけって何だったんですか?

戸田さん うん。そうですね。もともと親父が大工でしたから,大工というのは、要するに機械でやらない。手で、手刻み墨付けやって、手で刻んでいくと。こういううねった曲線のものをうまく引っ付けちゃうんですね。こんなのは機械じゃできないんです。計算でもできないんです。

関原 ふ~ん。

戸田さん 昔の大工さんの隅付け刻みという世界なんですね。差金一本でやっちゃうんですね。こんな曲線のものが、ばたっと合うんですよ、これ。

佐々木 そうですね。

戸田さん この場でやっているんじゃないですよ。作業場で作って、ここ持って来て組み立てたらピシッとあうんです。

佐々木 へえ(驚)。

戸田さん この技術は、朝鮮や中国から伝わってきたんだけどね。聖徳太子が、要するに持ってきた差金なんですね。

関原 差金って・・・。

戸田さん 差金って,わからんかね?(笑)直角になっているやつだけどね。

関原 あれが差金なんですね(照)。

戸田さん あれでルート計算ができちゃうんですね。大工さんは、そういう関数なんていう世界で考えてない。差金で丸太の直径も出るし、すべて計算できちゃうんです。はい。あれが朝鮮半島から伝わってきて,こういうことができるようになったんです。法隆寺が、世界で一番古い木造建築物で,1300年ですよね。1300年の歴史があるんです。それがですね、プレカットといろいろ工場活動の機械ができて、皆工場でできてしまう。要するに、自宅に帰るときに、パソコンに打ち込んでおいて、ぽんとスイッチ入れば朝来たら全部もう材料ができている。

稲垣 設計だね。

戸田さん 材料が刻む機械が,自動で。

佐々木 それは今の時代?

戸田さん 今の時代。でも機械ができないのはこれです。これ(古民家の材木)は駄目なんです。

関原 何ですかね。

戸田さん 計算しようがない。

関原 1本ずつ違うからですか。

戸田さん そう。一本材積が違う大きさが違う角度が違う。こんなもの機械入れない。読み取れない。

関原 ああ,ふうん。

佐々木 (梁を見ながら)そこ繋いでるしね。

戸田さん そう。すごいですよ。これを、作業場で大工の頭ん中に入れたものを図面でバーッとやってっちゃう。

関原 これと、例えば、ここと、上を2本並べて、くっつけようかなって見ながらイメージするんじゃないんですか?

戸田さん それはもう、こういう図面を書きますよね。ここに1本ここに2本。それに応じて材料を選んできて。そこにはここの交差点があり、この交差するところの計算をちゃんとするわけですよね。穴をどれだけ掘って,ばっちり合わすとかね。これ,現場でやるんじゃないんです。やるんじゃないんだ。

関原 はい,ですよね。作業場でこの2本を見ながら、どうやって、組み合わせようか・・・。

戸田さん その穴の大きさを決めてく。

関原 それは一つずつ交差するとこ全部そうやってるってことですかね。

佐々木 その技術がすごいから、これを残したいっていうことなんですか。

戸田さん そう,そういうね,その工法が、もう今の新しい工法に変わっちゃって、大工もそういう仕事が注文あれへんし,機械でみんなやっちゃうからね。合理主義的な営利主義で。大工仕事も、こんな(古民家づくりのような)仕事はないんです。

佐々木 大工さんもそういう技術がいらなくても(家が)できちゃうんですね。

戸田さん それが大きな難点で,それが若い子には継承されないんです。

佐々木 なるほど,なるほど。

戸田さん だから今の若い子はできないんです。できないというか、そんな仕事がないんです。それを私らは大工の育成をしなきゃいけないってことで、今、若い子らを、全国から市外県外から5名の若い子が来て、うちの寄宿舎に住んでやってるんですね。

佐々木 それでこういう古民家再生を・・・。

戸田さん 習うわけなんです。

佐々木 まさにこういうふうに材木を組み込んだりとか,そういうそこのつなげるようなそういった技術とかを学んでる。

戸田さん 学んでいる。そういうところが空き家なんです。そういうところが壊されてごみになって、火力発電所の燃料なるとか、パルプなっちゃうんですね。

佐々木 火力発電所の燃料になっていること初めて知りました。

戸田さん こんなものを今、今赤松黒松ですけども,松くい虫で全滅しちゃってね、松が。もう取れないんですよ。

全員 はあ。

戸田さん ないんです,三河に。

全員 へえ。

戸田さん 長野県とか飯田まで買いに行くんですよ。買えるんですよ,新しいものをね。こんな曲がったものは、製品としては、なかなかなりにくいかな,うん。捨てられたり、処分されたりしちゃうの。それを、古民家っていうのは、大体100年から150年経っていますから。木材は乾燥していくとどんどんどんどん強度が上がってくるんです。切り倒されたときが一番弱いんです。

全員 へえ。

戸田さん で、中の水分がどんどん抜けていくに従って強くなっていくんです。

佐々木 硬くなっていくと。

戸田さん 硬くなっていくんです。だから、それが,法隆寺が今1300年経って,やっと、(硬度が)下がっていくところなんです。

佐々木 やっと下がっていくところなんですか?

戸田さん 1300年経って、ここからようやく弱っていきそうな感じなんですね。

全員 へえ。

戸田さん 100年200年ちゅうのはまだ若造なんですよ。

佐々木 すごいっすね。

戸田さん その木を皆さん捨てっちゃっているんです。

関原 そうですよね。

戸田さん そういう教育をされていない。で,昭和25年に建築基準法ができて、これはアメリカの占領国ですから、アメリカの法律みたいなもんなんです建築も、全部そういう大工の技術は削除されたんです。

佐々木 それがさっき第二次世界大戦というところをもう一つ理由というところなんですね、なるほど。

戸田さん だから、合理的なやり方で北海道から沖縄まで全部同じ家なんです。

佐々木 はいはいはい。

戸田さん どんな家だって同じ家なんです。それ以外は許されない。法律で、これは管理主義ですね。だから,北海道の大きな家も沖縄の家もどこの家も備品はともかく、法律はみな一緒なんですよ。

関原 そ、それってすいません。ちょっと外れるかもですけど、役所の人が家建てたら固定資産税とかチェックしてるじゃないですか。そういうのを計算しやすいとか。それとかはあまり関係しない。

戸田さん この柱が太い分には構わんのです。一番最低限これだけの太さにすると決めたんです。これ以下はいかんよってことですね、壁もこれ以下の壁を作っちゃいけない。最低限のレベルを決めたんです。

関原 うん。

戸田さん で、上はどれだけでもいいんです。

関原 規格を揃えたのは,高さとか・・・。

戸田さん 規格に揃えたのは、行政が管理しやすいんです。建築の検査や、耐震の検査もしやすいんです。

関原 地方独特の技法とかは・・・。

戸田さん そんなことしたらえらいことでしょ。

関原 はい。なんかもやめてくださいってことですか。

戸田さん やめてもできない。

関原 やっちゃいけない・・・。

戸田さん 法律的にはできるんですよ。できるけど文化財級の手間がいるんです。文化財を手直しするぐらいの手間がいる。

佐々木 だから、だからその戦前に立っていて残ってる建物は、その貴重な財産というか勉強する道具っていうか、はい。

関原 あっ,はい。

佐々木 建っているから許されてるのかなあ。

関原 新しく建てることはできるんですか?

佐々木 作ろうと思えば作れないこともないんですよね?

戸田さん 作れないこともないけど大変な計算をしなきゃいけない。計算式が大変なんで、裏付けをとるのに。

関原 裏付け・・あっ,耐久性とかのデータを出さないといけないから!

戸田さん そう,そう,そう。今の家はみんなデータが出ているんです,国から。

関原 あああ。

佐々木 こういうふうに作ればこれだけの強度という・・・。

戸田さん この柱なら強度5というように。今度私らはこの強度5というのを証明しなきゃいけない,こういう家(古民家)は。

佐々木 なるほど。だからそうすると古民家を再生してった方が、もともとできているし,その方がやりやすいんですね。

戸田さん そう,法律ができる前に建っているんですよ。だから、善意の法律違反なんですね、善意の。だから、そこは とがめられない。

佐々木 だからその空き家として置いて朽ち果てていくよりも、新しく建てるよりも、そういったものを利用して建てた方が、建てやすいし、認められているというか。

戸田さん それと権利を持っているからね、既得権を。法律ができる前から建っているから,これは法律違反じゃないんです。そうですよね。

関原 はい。

戸田さん だから逆に言うと何をやってもいいわけですよ。極端に言えば。

佐々木 面白いですね。

戸田さん 何があってもいいけども、何があってもいい教育を誰も受けてないんです。昭和25年以降に入社した人は。

佐々木 さっき言った若い人たちはなおさらわかんないわけですよね。

戸田さん 私は25年前からね、70歳なんですけど,その私は受けてないんです,教育を。

佐々木 なるほど。

戸田さん だからこういう家は、誰も何をしてよいのかわからないです。

佐々木 いろんな意味でもったいないわけなんですね。

関原 そうですね。やっぱり古民家なんですね。

戸田さん そう。だからそれを私らが、全国的に組織を作って、守っていこうねと。絶対古民家は弱くないし、伝統工業は強いんだから、それを証明するような機会を私はみんな出し合ってつくったし、それを国を認めてくれ始めたんです。それが一般社団法人全国古民家再生協会。

関原 それはいつぐらいにできたんですか。

戸田さん 私が入った15年ぐらい前に。

関原 そういう動きが、2000年代に入ってから。

戸田さん 最近は国土交通省も協力的になってですね、これ文化ですからね。インバウンドが原因なんです。

関原 へえ,海外から・・・。

戸田さん 海外から来た方が、やはりどこに行きたいかっていうと京都なら行った方や、或いは日本のファンが必ず、日本の原風景を見たいんですね。東京とかね、大阪、京都はもういいと。本当になんてどこなのっていう、観光地でなくて、それが地方に、地方のそれもハウスメーカーがたった家じゃなくて、やっぱり古民家なんです。そこへ泊まりたい。そこを見たい。で,農泊事業っちゅうのが始まったんですね。農家民宿ということね。補助金もらってね。それ私ども受けて、鳳来の阿寺という地区をモデル地区にして、ここで5年目ですか。宿泊もね、旅館業法とか、消防法もみんな規制緩和されてね、六畳二間ぐらいは旅館業ができるんです。お金を取れるんだよ。あれは旅館業務でお金を取っちゃいけないっていう法律があるからね。旅館用の許可を取らないと。農家やってる方とか、そういう方は、旅館業の許可を取らなくても、お金取っていいですよっていう規制緩和できたんです。

全員 へえ。

戸田さん それを5年前に私らは許可を受けて、補助金で阿寺をモデル地区にしたんです。

佐々木 ちょっとホームページとかで、その様子を見てみましたけど。

戸田さん はい。

佐々木 そういった意味で家が残っているからさっきの空き家を再生するとそういった、いわゆる、旅館みたいな形の、自分でできるし、だからいろんな意味でプラスになるってことが多いんですね。

戸田さん そうなんです。そういうところが財産なんですよ。国もそれを後押しして、でもそれがなかなか末端まで伝わらないんですね。で,阿寺でおじいちゃんおばあちゃんが幾ら百姓で野菜作ったといっても,野生動物に食べられちゃうんですよ。私が設定しても大体1泊1万円なんですね。でそういう人たちは1人でこないんです。大体3、4名で来るんです。一晩で、すごいですよね(笑)。

関原 そうですよね。

戸田さん ただそういうように、人を寄せつけない方はまあいいんだけど。ウエルカムな方は、そういう現金収入は、移住定住者が来たときに、皆さん職業決めてこられる方はいいけども、まずは避暑に来て,それから落ち着こうという方は現金収入がないじゃないですか。彼らにやってもらおうと思って、当面の資金稼ぎにね。お風呂は例えば温泉のうめの湯に行ってもらうとかね。送り迎えしてあげてね。食事は阿寺の公民館でみんなで食べようとか。みんなが作ったものを村人みんなでね。そういう許可も、規制緩和でくれたんですね、現状。

佐々木 もうめちゃめちゃこう,なんか空き家の話から聞いてね,古民家の話だけなんですけど、それだけ深い話だったんだな。

戸田さん やっぱそこの目的は、手段として、古民家の農家民宿なんです。目的は現金,経済を回すということなんです。お金をそこに持ってくるってこと。

今回はここまでとさせていただきます。戸田さんのお話はまだまだ続きます。さて,経済を回すということはどういうことなのでしょうか。次回が最終回となります。お楽しみに。

インタビュー第1弾の記事はこちら!
戸田工務店会長に聞くその1 人との出会い,そして東郷地域協議会・・・

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